石川柚木、大石直也、諏訪太朗、村井俊哉ら京都大学の研究グループは、京都大学、慶應義塾大学、国立精神・神経医療研究センター、東京慈恵会医科大学で取得したうつ病患者155名、健康被験者147名の構造MRI画像を用い、うつ病において構造、機能の異常が報告されている脳構造である扁桃体を解剖学的知見に基づき下位領域に分け、各領域の体積の縦断的変化を調べました。その結果、治療前のうつ病症例の右扁桃体体積は健常群に比べて小さく、薬物療法、認知行動療法、電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激の4種の治療のうちECTの前後においてのみ体積が増大すること、そしてECT後の体積増大が治療の6ヶ月後にもある程度維持されることを明らかにしました。また、右扁桃体の基底内側領域の治療前の体積と同基底外側領域の長期的な体積変化がそれぞれうつ病症例の不安症状の改善と関連していることを併せて報告しました。今回の結果は、うつ病に対し高い効果を示すECTの後に観察される扁桃体下位領域の構造変化が症状改善と関連することを示唆しており、うつ病治療の作用メカニズムにおける扁桃体の働きの解明や、新規治療の開発に貢献することが期待されます。
Electroconvulsive therapy-specific volume changes in nuclei of the amygdala and their relationship to long-term anxiety improvement in depression
DOI: https://doi.org/10.1038/s41380-024-02874-1
<著者>
Yuzuki Ishikawa, Naoya Oishi, Yusuke Kyuragi, Momoko Hatakoshi, Jinichi Hirano, Takamasa Noda, Yujiro Yoshihara, Yuri Ito, Jun Miyata, Kiyotaka Nemoto, Yoshihisa Fujita, Hiroyuki Igarashi, Kento Takahashi, Shingo Murakami, Hiroyuki Kanno, Yudai Izumi, Akihiro Takamiya, Junya Matsumoto, Fumitoshi Kodaka, Kazuyuki Nakagome, Masaru Mimura, Toshiya Murai & Taro Suwa
<掲載誌>
Molecular Psychiatry ,