自然科学研究機構生理学研究所の則武厚助教、二宮太平助教、小林憲太准教授、磯田昌岐教授は、ニホンザルの内側前頭前野から視床下部外側野に至る神経回路の活動を人工的に遮断することで、それまで他者の報酬を気にしていたサルが、それを気にしなくなることを明らかにしました。
自己の報酬量は同じでも、他者の報酬量が自分より多いとわかると、自己の報酬の相対的価値が下がり、仕事への意欲が低下してしまうことがあります。このような現象はサルでも見られることが分かっていましたが、脳内のどの神経回路で処理されるのかは、これまで明らかとなっていませんでした。今回の研究では内側前頭前野から視床下部外側野に至る神経回路を選択的に遮断すると、それまで他者の報酬を気にしていたサルが、それを気にしなくなるということを発見しました。また、その結果、他者の報酬が増えるにしたがって自己の報酬の相対的価値が下がるという現象が認められなくなりました。他者の報酬を気にしたり、それを知ったがために他者に嫉妬を覚えたりするなどという人間らしい「こころ」のはたらきを生み出す神経回路を明らかにできたことは、複雑な社会的感情の神経基盤の解明につながるものと期待されます。
【成果情報はこちら】
https://www.nips.ac.jp/release/2023/07/post_513.html(NIPS)
https://www.amed.go.jp/news/seika/2023_seika_index.html(AMED)
Chemogenetic dissection of a prefrontal-hypothalamic circuit for socially subjective reward valuation in macaques
DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-023-40143-x
Atsushi Noritake, Taihei Ninomiya, Kenta Kobayashi, and Masaki Isoda
Nature Communications. 2023年7月20日 (Nat.commun.)