森重健一らATR脳情報通信総合研究所と富山県立大学の研究グループは、ノイズ除去技術と機械学習法を組み合わせることで、視覚的注意と眼球運動を司る脳領域は同一であるものの、両者に別々の神経機構が存在することを明らかにしました。
人間は興味のある対象に目を動かして注意を向けることも、目を動かさずに注意のみを向けることもできますが、この二つが脳内でどのように実現されているか、未だ明らかではありません。本研究では、視覚的注意と眼球運動を実現するメカニズムの関係について、脳磁図(MEG)データから注意を向ける対象物の動きを予測するモデルを求め、その汎化能力を調べました。その結果、視覚的注意と眼球運動に共通の脳領域が異なる両者の神経活動を制御していることがわかりました。今回の研究で用いた機械学習に基づく手法は、時々刻々と変化する脳内時系列情報を非侵襲的に調べるための有用なアプローチになることが期待されます。
Common cortical areas have different neural mechanisms for covert and overt visual pursuits
DOI : 10.1038/s41598-021-93259-9
Ken-ichi Morishige, Nobuo Hiroe, Masa-aki Sato & Mitsuo Kawato
Scientific Reports