森本千恵、阿部修、笠井清登、小池進介ら東京大学のグループは、自閉症スペクトラム障害では、小脳の小葉VIとCrus Iの白質体積が統合失調や健常群と比較して有意に大きくなっていることを明らかにしました。また、本研究は、自閉症スペクトラム障害に特異的にみられる、小脳—大脳間の形態学的な有意な相関を明らかにしました。
MRI脳画像研究により、小脳の形態異常が自閉症スペクトラム障害や統合失調症に関与していることが示唆されてきました。しかし、これまでの研究は疾患ごとに小脳形態を調べており、疾患間でどのような違いがみられるのかは十分に調べられていませんでした。また、小脳は大脳の領域と連関して、運動から高次の認知および感情処理などさまざまな機能も関与していますが、それぞれの小葉ごとの機能的局在は、大脳との入出力パターンに依ると考えられています。そのため、自閉症スペクトラム障害と統合失調症における、小脳—大脳の形態学的連関パターンを明らかにすることは、それぞれの疾患の病理を理解すること重要だと考えられますが、疾患ごとにどのような連関パターンがみられるかについては調べられていませんでした。
本研究の成果は、小脳の形態および小脳—大脳連関の形態学的相関の特性のような生物学的違いを検討することが、自閉症スペクトラム障害および統合失調症の診断基準や治療の決定に役立つ可能性を示しています。
Unique Morphometric Features of the Cerebellum and Cerebellocerebral Structural Correlation between Autism Spectrum Disorder and Schizophrenia
DOI : 10.1016/j.bpsgos.2021.05.010
Chie Morimoto, Yuko Nakamura, Hitoshi Kuwabara, Osamu Abe, Kiyoto Kasai, Hidenori Yamasue, and Shinsuke Koike
Biological Psychiatry Global Open Science