理化学研究所生命機能科学研究センター(林 拓也チームリーダー)は、セントルイス・ワシントン大学医学校(ヴァンエッセン教授)、リヨン大学(ヘンリーケネディ教授)らとともに、最新の神経画像法や神経解剖の知見を分析し、ヒト、マカクサル、マーモセット、マウスの皮質の脳回や分画、連絡性について多種の動物間でどのように変化し、ヒト脳が進化しているかその視点を明らかにしました。皮質全体における正確な機能構築の同定にはシート状の皮質構造の位置情報を正確に分析する表面解析法が最善な方法です。さらに機能や構造、連絡性や位置特異性などマルチモーダルな情報を用いることがモザイク状になった皮質領域の特定に重要と思われます。実際に4種の動物の間では皮質領域の総数に大きな差があり、ヒトの大脳皮質の個人差は半球間の非対称性にも表れています。連絡性の分析では動物脳での解剖学的な連絡性の解明だけではわからない非直接性機能連絡によって種間の相同性の可視化が示唆されます。これらのことから皮質構築についての多面的・統合的なアプローチによって霊長類と非霊長類の脳機能構築の理解に寄与すると考えられ、この目的の達成には霊長類動物やげっ歯類の画像、解剖データおよびその解析技術の高品質化や高精度化が課題と考えられます。
論文情報
Perspective for understanding cortical folding, parcellation and connectivity in human, non-human primates and mice
DOI : 10.1073/pnas.1902299116
David C. Van Essen, Chad J. Donahue, Timothy S. Coalson, Henry Kennedy, Takuya Hayashi, and Matthew F. Glasser
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America