株式会社国際電気通信基礎技術研究所(略称ATR)・脳情報通信総合研究所(所長・川人光男)、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(Hakwan Lau教授)などのグループは、デコーディング技術[2]を用いて、恐怖刺激に対する主観的な感情体験と客観的な生体反応を司る脳領域がそれぞれ異なることを証明しました。
不安障害などの感情の障害の研究では、主観的な感情体験の代用として、皮膚発汗、瞳孔反応などの客観的な生体反応がよく使われます。しかし近年、主観的な感情体験と客観的な生体反応の間には解離があることが指摘されていました。本研究成果は、感情体験の代用としての生体反応の使用に疑問を投げかけ、それぞれ個別の尺度として扱うことの重要性を明らかとしました。
具体的には、今回、ATRのVincent Taschereau-Dumouchel研究員等は、機能的磁気共鳴画像(functional Magnetic Resonance Imaging, fMRI)[1]から脳情報を解読する機械学習の技術:デコーディング技術を用いて、主観的な恐怖体験の強さと客観的な恐怖反応の強さを予測可能な脳領域を探索しました。その結果、客観的な恐怖反応の強さは扁桃体[3]等で予測可能である一方、主観的な恐怖体験の強さは前頭前野で予測可能であることが判明しました。
この結果は、今後の研究や治療において、客観的な生体反応に加えて主観的な感情体験を指標とすることの重要性を示唆しており、精神疾患に対する最適な治療法の開発につながることが期待されます。
【プレスリリースはこちら】
https://www.atr.jp/topics/press_191029.html (ATR)
https://www.amed.go.jp/news/release_20191029.html (AMED)
論文情報
Multivoxel pattern analysis reveals dissociations between subjective fear and its physiological correlates
DOI : 10.1038/s41380-019-0520-3
Vincent Taschereau-Dumouchel, Mitsuo Kawato, and Hakwan Lau
Molecular Psychiatry